何故、短い営業キロ数で私鉄は経営が成り立つのか?

その11 何故、短い営業キロ数で私鉄は経営が成り立つのか?

 

■目次
1.疑問点
2.全JRと全私鉄のデータ比較 (2018年度)
 1)輸送人数 
 2)一人当たりの平均距離
3.三大都市交通圏の大手私鉄の場合 (2010年度)
4.地方の私鉄の場合
5.大手私鉄の特徴解析
 1) 営業キロ数のランキング
 2) 輸送人員/営業キロ(人/km)
6.まとめ 

 

1.疑問点

小生、以前から、何故、短い営業キロ数の私鉄は経営が成り立つのか?
とても疑問でした。

 

近辺では京王帝都電鉄がありますが、路線は新宿ー高尾山口がメインで、
ほとんどJR中央本線と平行して走っていて競合しています。

 

JR東日本の全体の路線距離に比べれば、たぶん何百分一に過ぎないのに
何故、経営が成り立っているのですかね。

 

他の私鉄も同じです。

 

そこで今回は、その疑問について、回答を考えてみました。

 

 

2.全JRと全私鉄のデータ比較 (2018年度)

全国を走るJR各社と私鉄全社の輸送人員と平均距離データを比較しました。

 

1)輸送人数 
 ・全JR+全私鉄  約253億人
 ・全JR      約 96億人
 ・全私鉄      約157億人

 

 JRはほぼ全国展開、私鉄は一般的に地域との密着性が強いことから、
 利用者数はJR各社の合計の方が多いイメージがありましたが、実際には
 私鉄各社の合計の方が多んですね。びっくりしました。

 

2)一人当たりの平均距離
 ・全JR     29.1km/人
 ・全私鉄     10.4km /人

 

 JRの方が輸送人数が少なかったですが、平均距離は3倍近くあります。
 これは、JRは近郊や長距離も含まれるので当然かと思われますね。
  

 

3.三大都市交通圏の大手私鉄の場合 (2010年度)

全国の鉄道全体の利用者数の実に86.6%を三大都市交通圏の利用者が
占めているということです。
逆に言うと、三大都市交通圏以外で鉄道を利用する人の数は全体のわずか
13.4%しかいないことになります。

 

これは、利用者数という見地だけで日本の鉄道を見た場合、鉄道の役割は大都市の
通勤輸送にほぼ限定されるということです。

 

つまり、三大都市交通圏の大手私鉄は、短い営業キロ数でおいしい所だけを
食べているということですかね。

 

 

4.地方の私鉄の場合

我ら、富士急行を例にとってみます。
大月駅と河口湖駅間26.6kmしかなく、使用者数も超少ないです。
それでも、立派に経営が成り立っています。

 

その理由は、

 

1.レジャー・サービス業 遊園地、ホテル、ゴルフ場、スキー場、キャンプ場など
2.運輸業      富士急行線(大月〜河口湖)、乗合バス、高速バス、貸切バス、など
3.不動産業     建物賃貸、別荘分譲など

 

などで、ネームバリューを活かした地域密着型多角経営なんですね。
鉄道部門の収益はほんのわずかな比率です。

 

大手私鉄も同じです。
例えば、京王帝都電鉄は、調布、府中、聖蹟桜ヶ丘などのおしゃれな街を
独自につくって、不動産、レジャー、商業でも儲けています。

 

 

5.大手私鉄の特徴解析

私鉄業ってとても魅力を感じますね。

 

小生、増々興味が湧いてきましたので、独自に表とグラフを作ってデータ解析を行いました。

 

1) 営業キロ数のランキング

先ず、2018年の営業キロ数のランキングです。
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やはり、近畿日本鉄道(近鉄)、東武鉄道(東部)、名古屋鉄道(名鉄)がダントツですね。

 

小田急電鉄(小田急)や東京急行(東急)が思ったより短かったです。

 

また、阪神電鉄(阪神)や相模鉄道(相鉄)は極端に短いですね。

 

相鉄は最近JRの乗り入れや将来東急との乗り入れにより距離は多くなっているはずです。

 

また、別の観点で言うと注目点は、輸送人員です。

 

例えば、近畿日本鉄道は営業キロ数は1位ですが、輸送人員はだいぶ少ないですね。

 

鉄道としての利益を考えると、営業キロ数よりも輸送人員だと思われます。

 

よって、一番右の輸送人員/営業キロ(人/km)を考えてみます。

 

2) 輸送人員/営業キロ(人/km)

その11 何故、短い営業キロ数で私鉄は経営が成り立つのか?
その11 何故、短い営業キロ数で私鉄は経営が成り立つのか?
東京メトロと東急が素晴らしいですね。

 

特に、東急は営業キロ数は10位で100kmそこそこですが、
輸送人員/営業キロ は2位です。
これは一つには鉄道路線の選択のうまさと、後から進めた路線廻りの
街作りの旨さが考えられます。
さすが東急ですね。

 

また、相鉄も立派です。営業キロ数が40km以下ですが
小田急に緊迫する5位に付けています。
先程言いましたが今はJRと乗り入れをしていて、
相鉄車両は新宿まで来ていますので、もしかすると3位の京王、
4位の小田急を抜いているかもしれません。

 

その11 何故、短い営業キロ数で私鉄は経営が成り立つのか?

 

おもしろいは、同じ会社ながら規模が小さい阪神の方が阪急より上位にいます。

 

残念なのは、最下位の名鉄です。
営業キロ数は3位なのですが、やはり敗因はローカルの支線が
多過ぎる事だと思います。
名鉄は名古屋地方の中小私鉄の合併で多くなりましたが、
やはり無理がありますね。
今後の経営を考えると選択と集中、支線のバス化などを考えるべきだと思います。

 

6.まとめ 

以上、折乃笠は、鉄ちゃんからへ鉄道ジャーナリストに変身しました(笑)。

 

とても興味深い話ができました。

 

何故、短い距離の私鉄が経営が成り立つのかがよくわかりました。

 

やっぱ、私鉄の力は凄いですね。

 

 
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